株式会社が解散した場合は、法人格を消滅させるための清算手続きへ
今回は、実務上多い、株主総会において解散を決議した株式会社における手続きやスケジュールについてお話します。
まず、株主総会において株式会社の解散を決議した場合に「会社はすぐに消滅する」と思われている方が多いですが、それは違います。
解散を決議した日から、清算株式会社となり(会社法第476条参照)「清算手続き」のプロセスが始まります。
この清算手続きとは、簡単に申し上げますと、会社の解散当時未了の状態の事務の後始末をつけ(現務の結了)、取引先などから未回収のお金を取り立て(債権の取立て)、未払いの費用や借入金をすべて完済し(債務の弁済)、最終的に会社に残った財産を株主に対し分配を行う(残余財産の分配)手続きです(会社法第481条参照)。
また、清算手続きでは、債権者に対して債権を申し出る旨の官報公告を行い、かつ、知れたる債権者に格別の催告を行う必要があります。公告期間は2か月を下ることはできないとされております。そのため、少なくとも解散の決議日から2か月間は清算手続きは完了することができません(会社法第499条第1項)。
なお、債務超過の疑いがある清算株式会社の場合は、通常の清算手続きではなく、特別清算という手続きをすることになり、裁判所の監督の下で手続きを行っていくことになります(会社法第510条以下参照)。実務上、債務超過の原因が、役員からの貸付金であるということが多い印象です。このような会社の場合は、役員から債権放棄して頂くことで、債務超過を解消し、特別清算の手続きを回避する方法が取られています。
株式会社を解散・清算する場合は、税務手続きも必要となります
株式会社を解散・清算する場合は、法務手続きの他、税務手続きも必要となります。
主なものとしては、以下のものがあります。なお、税務に関するお問い合わせは税理士にお尋ねください。
・解散届提出
・解散確定申告
・清算確定申告
・異動届(清算結了届)提出
株式会社の解散・清算手続きのスケジュールは?
それでは、解散・清算手続きのスケジュール例を見ていきましょう。以下のスケジュール例は、事業年度が2月1日~1月31日の株式会社において2026年1月31日付で株主総会決議で解散を決議する例です。この他の前提条件は下記のとおりです。また、株主総会は、いわゆる書面決議(会社法第319条第1項)にて行うことを想定しており1日で決議をとります。(実務上多い、株主が少数の会社を例としており、合意はすぐにとれるという前提で1日としております。)なお、従業員を雇用している場合は社会保険・雇用保険の手続きが必要となりますが、本コラムでは言及しません。
前提条件
①株主は多くない(株主=取締役=代表取締役のいわゆる1名会社、株主が全て身内などを想定)
②債務超過ではない
③取締役会及び清算人会を置いていない株式会社
④清算人は1名を株主総会で選任
株式会社の解散・清算手続きのスケジュールの例
| 2026年1月19日(月) | 【法務】官報へ解散公告申し込み(掲載まで約14営業日) |
| 2026年1月31日(土) | 【法務】全株主への提案、全株主から同意を得て株主総会決議成立、清算人の就任承諾 決議の内容:解散・清算人選任 |
| 2026年2月2日(月) | 【法務】登記申請 ※登記完了まで約1か月 登記の内容:解散・清算人及び代表清算人の就任 【法務】知れたる債権者へ格別の催告書発送 ※官報掲載日までには知れたる債権者へ到着するように発送 |
| 2026年2月9日(月) | 【法務】官報に解散公告掲載 債権申出期間(2か月) |
| 2026年3月9日(月) | 【法務】登記完了 【税務】登記完了後遅滞なく解散届提出 |
| 2026年3月10日(火) | 【法務】全株主への提案、全株主から同意を得て株主総会決議成立 決議の内容:解散時の財産目録・貸借対照表の承認 |
| 2026年3月31日(火) | 【税務】解散確定申告期限(解散日から2ヶ月以内) |
| 2026年4月9日(木) | 【法務】債権申出期間満了日 |
| 2026年4月15日(水) | 【法務】債務の弁済を行い、残余財産確定 【税務】清算確定申告 ※残余財産確定の翌日から1か月以内かつ残余財産分配の前日まで |
| 2026年4月22日(水) | 【法務】残余財産の分配 |
| 2026年4月23日(木) | 【法務】全株主への提案、全株主から同意を得て株主総会決議成立 決議の内容:決算報告承認 (清算結了効力発生) |
| 2026年4月24日(金) | 【法務】登記申請 登記の内容:清算結了 |
| 2026年5月25日(月) | 【法務】登記完了 【税務】登記完了後遅滞なく異動届(清算結了届)提出 |
各手続きについて簡単に解説致します。
①官報へ解散公告の掲載申し込み
まず、スケジュール例では官報公告の申し込みを一番初めに行っております。解散手続きにおいては必ず官報に解散公告を掲載する必要があります。この官報の掲載の手続きは、掲載の申し込みをしてから、約14営業日かかります。営業日ベースで約14日かかりますので、1か月とまではいきませんが、申し込みをしてから掲載まで約3週間近くかかります。祝日が多い月であれば、申し込みをしてから1か月以上かかることもあるのです。よく、「掲載を依頼したら翌日には官報に掲載される」というイメージをお持ちの方がおりますが、実際にはこのように非常に時間がかりますので、ご注意ください。また、「解散を決議する前に申し込みしてもいいのか」という質問をうけますが、法的には問題ありません。(もちろん、「解散決議が否決されるという事態」や「やっぱり解散しない」となる場合は、理論上考えられますので、そのような事態にならないようにご注意ください。)なお、後述しますが、解散決議後に官報へ掲載申し込みを行うことももちろん可能です。
②全株主への提案、全株主から同意を得て解散・清算人を選任する株主総会決議成立
いわゆる書面決議の場合は全株主への提案書を送付し、全株主から同意を得て株主総会決議があったとみなされます。提案書の送付や同意書の回収を1日で済ませられれば、1日で株主総会決議が成立します。また、株主総会を開催する必要がないので、株主総会招集通知の発送等の手続きも必要ありません。
③解散・清算人及び代表清算人の就任の登記申請
解散等決議に基づき、登記申請します。一般的な登記必要な書類は、定款(会社実印を押印した原本証明付きのもの)株主総会議事録(スケジュール例では書面決議なので、議事録の体裁は開催型のものではなく書面決議用のものが必要。なお、法務局には提出しませんが提案書・同意書となります。以下も同じ。)、株主リスト、清算人の就任承諾書(書面決議のため必ず必要。)司法書士への委任状(会社実印押印)、印鑑届出書(会社実印、個人実印押印必要。)となります。登録免許税は3万9000円です。
④知れたる債権者へ格別の催告書発送
知れたる債権者がいる場合は当該債権者へ格別の催告書を送る必要があります。催告書は郵送することが一般的です。また、官報に解散公告が掲載される日までに到着するように郵送します。これは、官報に掲載された以降に債権者へ到着するとそこから、債権申出期間をカウントしなければならず、非常に煩雑になるためです。債権者へ到着するタイミングもバラバラになるとより煩雑になり、それを避けるため、官報に掲載される日から債権申出期間をカウントできるようにするためです。実務上の注意点としては、近年、郵便は比較的近い距離であっても速達でなければ、翌日に到着しません。そのためこのスケジュール例では、少々余裕を持たせて官報公告掲載日1週間前に発送というスケジュールにしております。なお、知れたる債権者がいない場合は、この格別の催告書の発送をする必要はありません。
⑤官報に解散公告掲載
解散公告が官報に掲載され2か月の債権申出期間がスタートします。この2か月の期間は短縮ができません。また、債権申出期間中は、債権者に弁済をすることはできません(会社法第500条第1項)。弁済する場合は申出期間満了後に行います。官報はインターネットで閲覧することができるので、掲載日にインターネットで掲載を確認します。なお、官報は原則、紙面は交付されません。インターネットで掲載を確認後、必要に応じて紙面をダウンロードし保存しておくことをお勧めします。
⑥登記完了、そして登記完了後遅滞なく解散届提出
2026年6月1日現在、都内の法務局は、登記を申請してから登記完了まで約1か月かかります。登記完了後、遅滞なく解散届を税務官庁等へ提出します。
⑦全株主への提案、全株主から同意を得て解散時の財産目録・貸借対照表を承認する株主総会決議成立
解散日の財産目録、貸借対照表を作成し、株主総会の承認を得る必要があります。
⑧解散日から2ヶ月以内とされている解散確定申告期限
税務手続きとして、解散確定申告をする必要がありますが、その申告期限は解散日から2ヶ月以内とされているのでご注意ください。
⑨債権申出期間満了日
2か月の債権申出期間が満了し、清算結了まであと一歩のところまできました。なお、2か月は長いので、忘れないようにスケジュールは管理する必要があります。
⑩債務の弁済を行い、残余財産確定。その後、清算確定申告へ
債権者へ弁済を行い、残余財産を確定させます。なお、スケジュール例では、全ての債権者へ弁済を行うために余裕を持たせ1週間期間を設けております。残余財産その後、残余財産確定の翌日から1か月以内かつ残余財産分配の前日までに清算確定申告を行う必要があります。
⑪残余財産の分配
残余財産がある場合は、株主に分配します。残余財産がない場合はこの分配手続きはありません。
⑫全株主への提案、全株主から同意を得て決算報告を承認する株主総会決議成立
最終的な決算報告書を作成し、株主総会の承認をうけることで、清算結了の効力が生じ、株式会社は消滅することになります。
⑬清算結了の登記申請
清算結了の登記申請します。一般的な登記必要な書類は、決算報告書を合綴した株主総会議事録(注意点は上記のとおり。)株主リスト、司法書士への委任状(会社実印押印)となります。登録免許税は2000円です。
⑭登記完了、そして登記完了後遅滞なく異動届(清算結了届)提出
登記完了後、遅滞なく異動届(清算結了届)を税務官庁等へ提出します。
解散・清算手続きはスケジュールが命 ~スケジュールの作成から承っております~
スケジュール例を挙げて、実際の手続きのアウトラインをご説明しました。思いのほか時間がかかるといった印象をもたれることが多いです。スケジュール例でみても1月の中旬から手続きを開始して、清算結了の登記完了まで、約4か月かかります。もちろん、少し余裕をもったスケジュール例なので、短縮できる部分はあり、もう少し早く清算結了登記をすることも可能ですが、解散公告申し込みから掲載までの時間や債権申出期間の2か月は短縮できないため、例えば、「清算結了登記を1か月早める」と言った短縮は、スタートを早める以外には方法がありません。
このように解散・清算手続きはスケジュールが命であり、税務手続きも絡んできますので、税理士の先生との連携も重要になってきます。当事務所は、税理士の先生と連携して対応しており、多くのお客様・税理士の先生からご好評を得ております。
当事務所では、解散・清算手続きのご依頼を受けた場合は、必ず、スケジュール案を作成し、ご提示しております。スケジュール案をご確認頂き、例えば、「解散決議後に、解散公告申し込みをしてほしい」「可能なかぎり早めに清算結了してほしい」「●月末日に解散してほしい」など、ご要望あればそれに応じてオーダーメイドでスケジュールを作成しております。
スケジュールの作成から解散公告原稿作成・公告掲載依頼、法務書類作成、そして登記手続きまで、当事務所は一貫してサポートしております。
解散・清算手続きに関するご相談・ご依頼は、下記のお問い合わせフォームよりお問い合わせください。
著者:代表司法書士 佐々木 翔
東京都世田谷区南烏山4丁目3番8号マノアール世田谷301
司法書士あおぞら法務事務所

