「権利証」や「登記識別情報通知書」が必要な登記の申請とは?
まず、すべての登記申請に「権利証」や「登記識別情報通知書」(以下、「権利証等」といいます。)が必要というわけではありません。主なものとしては、以下のような場合です(他にも権利証等が必要となる登記申請は数多くあります)。簡単に申し上げますと「現在の不動産の所有者が、その権利を失う 又は 制限を受ける 登記手続き」の際に必要となります。
①売買・贈与による所有権移転登記(不動産を売る、あげる時)
②抵当権設定登記(借入の際に不動産を担保に入れる時)
なお、登記識別情報は情報であるため紛失ということは起こりえないというのが法律の考え方なのですが、本コラムでは、わかりやすさを重視し、登記識別情報が記載された登記識別情報通知書を紛失したという意味で、登記識別情報につきましても便宜、紛失という表現を使用させて頂きます。
権利証等を紛失した場合は、どのように登記申請するのか? ~本人確認情報とは?~
上記のような不動産の登記手続きを行う場合、不動産の所有者本人であることを証明するために「権利証等」が必要となります。しかし、権利証等を紛失してしまった場合において、絶対に登記手続きができないのかというと、そうではありません。いくつか方法はありますが、通常は、司法書士が不動産の所有者本人であることを確認し、「本人確認情報」を作成します。これを登記申請時に法務局へ提出することで、登記手続きを進めることが可能となります。
この「本人確認情報」とは、司法書士が、不動産を売却する方・担保に提供する方が間違いなく「登記名義人の方がご本人であること及び登記名義人の方が当該不動産の所有者であること」を確認したという書類です。
より具体的には、代理人として登記申請を行う司法書士が、不動産を売却する方・担保に提供する方と直接お会いして面談を行い、まず、運転免許証などの本人確認書類を厳重にチェックし、「登記名義人の方がご本人であること」を確認します。その上で、次に不動産に関する資料を確認し、「登記名義人の方が当該不動産の所有者であること」を確認します。この2点を確認し、間違いなくその不動産の権利をもっている本人であり、かつ、不動産の登記名義人であると判断した場合に限り作成される特別な書類です。
なお、「オンラインで面談することは可能でしょうか?」と質問をうけますが、2026年現在、不可です。(なお、新型コロナウィルスなどの感染の拡大を防止する場合等で医療機関や高齢者施設の衛生上の必要性がある場合には一定の条件のもと認められるとする令和5年3月30日法務省民事局民事第二課長の回答があったことだけご紹介し詳細は割愛します。)
さて、本人確認情報を作成するにあたり①「登記名義人の方がご本人であること」、②「登記名義人の方が当該不動産の所有者であること」を確認する必要があり、本人確認情報を作成する場合はこれらを準備して頂く必要があります。では、準備して頂く、具体的な書類は何か見ていきましょう。
本人確認情報の作成に必要な書類① ~本人確認書類~
まず、①「登記名義人の方がご本人であること」を確認するための書類として、以下のAのうち1点(実務上、「1号書面」とよばれる書面)又はBのうち2点(実務上、「2号書面」とよばれる書面)が必要になります。(なお、3号書面という類型もありますが、本人確認情報作成において、ほとんど利用はされておりませんので、割愛します。)
A.いずれか【1点】で良いもの(顔写真付き公的身分証明書)
・マイナンバーカード(個人番号カード) ※通知カードは不可です。
・運転免許証
・運転経歴証明書(平成24年4月1日以降の交付されたもの)
・在留カード
・ 特別永住者証明書
※いずれも顔写真付のもので、氏名、住所および生年月日の記載があるものです。有効期限切れのものは不可となります。
【注意:パスポートについて】
2020年2月4日以降に発行されたパスポートは、住所の記載がありませんが、法令上、パスポートを確認して、本人確認情報を作成することについて差支えないとはされております(司法書士連合会 2023年5月発行 月報司法書士№615 74頁以下)。
しかし、同姓同名の別人もあり得ますし、また、不動産の売買の場合は、犯罪収益移転防止法の適用があり、住所の記載のないパスポートでは、犯罪収益移転防止法において求められる本人確認書類としては利用できないとなっております。結局のところ、パスポート以外の書類を確認しなければならないので、注意が必要です。
B. 【2点以上】の提示が必要なもの
・資格確認書(書面によって作成されたものに限られます。)
・介護保険の被保険者証
・健康保険日雇特例被保険者手帳
・児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳又は戦傷病者手帳
※いずれも、氏名、住所および生年月日の記載があるものです。有効期限切れのもは不可となります。
【注意:基礎年金番号通知書】
基礎年金番号通知書には、住所の記載がありません。しかし、法令上、基礎年金番号通知書に基づき、本人確認情報を作成を作成できるとされております。この点についは、上記のパスポートの場合と同様の問題点があるため注意が必要です。
本人確認情報の作成に必要な書類② ~「不動産の権利を取得を確認できる書類」と「不動産との関連性を確認できる書類」
次に、「登記名義人の方が当該不動産の所有者であること」を確認する書類として、主なものとしては以下のものを確認します。なお、以下は主要なものを挙げました、ケースに応じて、別な書類を確認する場合もあります。
不動産の権利を取得を確認できる書類
・物件購入時の売買契約書、重要事項説明書、領収書
・建物新築時の請負契約書、建築確認通知書、検査済証、領収書
・登記原因証明情報の写し
・登記完了証
・遺産分割協議書、相続関係書類 など
上記のような不動産を取得したことを確認できる資料です。
不動産との関連性を確認できる書類
・固定資産税納付通知書
・固定資産税納付領収書
・電気、ガス、水道、電話料金等の領収書
・管理委託費の請求書又は領収書 など
上記のような不動産と名義人の方の関連性を確認できる資料です。
インターネットを検索しますと、本人確認書類のみあれば、本人確認情報を作成できるかのような記載が散見されますが、本人確認書類はもちろん、「不動産の権利を取得を確認できる書類」及び「不動産との関連性を確認できる書類」をも確認しなければ、登記名義人の方が当該不動産の所有者であることを確認できず、本人確認情報は作成できませんのでご注意ください。
まとめ ~当事務所は、取引の安全のため、厳格に本人確認を行っております~
権利証等が見当たらないからといって、登記できないということはありません。しかし、本人確認情報の作成には司法書士との面談が必須であり、通常の登記よりも事前の準備にお時間がかかる場合があります。「失くしたかもしれない」と気づいた時点で、お早めにご担当の司法書士へご相談ください。
当事務所は、取引の安全のため、厳格に本人確認を行っております。面談を行い、関係書類をすべて確認し、「目の前にいる方が間違いなく不動産の名義人本人である」と確認できない限り、本人確認情報は作成できませんので、ご了承ください。また、本人確認情報作成には、それ相応の費用を請求させて頂きますので、その点につきましても予めご了承下さい。
著者:代表司法書士 佐々木 翔
東京都世田谷区南烏山4丁目3番8号マノアール世田谷301
司法書士あおぞら法務事務所

