種類株式とは?
株式会社は、一定の事項について内容の異なる2つ以上の種類の株式を発行することができるとされています。この「一定の事項」とは、会社法には、9つの事項が定められております。9つの事項の詳細はまた別の機会にお話しますが、わかりやすい事項をあげますと、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会における議決権を行使することができる事項などがあります。
具体的な種類株式の例をあげますと、剰余金の配当や残余財産の分配について他の種類の株主よりも優先されている種類株式、株主総会における議決権を制限されている種類株式などがあります。
種類株式を導入する手続きは? ~新規に発行するだけではありません~
種類株式を導入したいという場合には、2つ方法があります。
1つ目は、新規に種類株式を発行する方法です。
種類株式を発行していない株式会社を例に具体的に申し上げますと、普通株式のみ発行していたところ、新たに株主総会における議決権を制限した株式を発行するという方法です。この方法では、新規で種類株式発行することになりますので、株式会社の発行済株式総数は増加します。
1つ目の方法の手続きの流れとしましては、株主総会において定款変更決議をし、種類株式の内容や発行可能株式種類株式総数等の種類株式を発行するために必要な事項を定款に盛り込み、その後、通常の募集株式の発行の手続きと同様の手続きで種類株式を発行します。
2つ目は、既に発行されている株式の一部について、株式の内容を変更(実務上「変更」ではなく「転換」と言うこともあります。)してその当該一部を種類株式にする方法です。
わかりにくいかと思いますので、同じく種類株式を発行していない株式会社を例に具体的に申し上げますと、普通株式100株のみ発行していたところ、この100株のうち、20株のみ、株主総会における議決権を制限した内容の種類株式に変更するという方法です。この方法では、新規で種類株式を発行していませんので、株式会社の発行済株式総数は増加しません。(普通株式80株、株主総会における議決権を制限した内容の種類株式20株で合計100株。)
この2つ目の方法については、実は会社法に規定されておりません。しかし、先例により認められており、実務上よく利用されております。今回は2つ目の方法についてお話させて頂きます。
既に発行されている株式の一部を種類株式に変更する手続きは?
具体的な例をあげてお話します。
普通株式しか発行しておらず、定款においても種類株式の内容など種類株式に関する定めを一切設けていない株式会社Xにおいて、株主総会において議決権を制限する内容の種類株式(以下、「議決権制限種類株式」と言います。)を発行できるように定款変更を行い、株主A、B、C、Dのうち、株主Aの所有する株式のみを普通株式から議決権制限種類株式に変更するという例について、具体的な手続きは以下のとおりです(昭和50年 4 月30日民四第2249号回答)。
①議決権制限種類株式の内容等を定款に盛り込むための定款変更にかかる株主総会特別決議
②株主Aの所有する株式が、普通株式から議決権制限種類株式に変更することについての株主Aと株式会社Xとの合意
③株主Aの所有する株式が、普通株式から議決権制限種類株式に変更することについての株主B、C、Dの同意
上記のとおり、株主Aは、株式会社Xとの合意が必要で、株主B、C、Dからも同意が必要となります。つまり、株主A、B、C、Dも株主Aの所有する株式のみを普通株式から議決権制限種類株式に変更することについて異議がないこと必要となりますので注意が必要です。
また、上記の手続きが完了した場合、既に発行されている普通株式の一部が議決権制限種類株式に変更されたことになり、登記事項に変更がありますので、登記の申請も必要になります。
既に発行されている株式の一部を種類株式に変更する手続きの利用場面は?
新たに株式を発行する方法による種類株式を発行する場合は、必ず種類株式を取得するために出資が必要になりますが、既に発行されている株式の一部を種類株式に変更する手続きの場合は出資の必要がありません。
したがって、出資するための資金が不足する場合などに、この方法が用いられているように思います。
公認会計士の先生、税理士の先生からのご依頼等にも対応可能です。
当事務所では、公認会計士の先生や税理士の先生からのご紹介で、「既に発行されている株式の一部を議決権制限種類株式に変更してほしい」、「既に発行されている株式の一部を社債類似株式に変更することを検討しているので一緒に手伝ってほしい」というご依頼・ご紹介もあり、各士業の先生と協力しながら対応することもよくあります。お気軽にお問い合わせください。
種類株式についてご相談は当事務所まで
既に発行されている株式の一部を種類株式に変更する手続きについてお話致しました。既に発行されている株式の一部を種類株式に変更する手続きについての経験は豊富にございますので、お気軽にご相談ください。また、種類株式の設計・新規の発行につきましてもお手伝いさせて頂きますので、何かございましらお気軽にご相談ください。
著者:代表司法書士 佐々木 翔
東京都世田谷区南烏山4丁目3番8号マノアール世田谷301
司法書士あおぞら法務事務所
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