株式分割の法務と実務 

株式分割とは?

 株式会社は株式の分割をすることができます(会社法第183条第1項)。株式分割とは発行済みの株式を細分化する行為です。例えば、1株を10株に分割するして、発行済株式総数を増加させることをいいます。

 発行済株式総数1000株の株式会社が、1株を10株に株式分割したときは、発行済株式が9000株増加することになり、株式分割実行後の発行可能株式総数は1万株となります。

 株式分割は、株式を細分化することにより、株価を引き下げる効果があります。そのため、中小企業においては、1株あたりの株価が高額になっている場合に、この金額を引き下げるため行われます。また、吸収合併等の組織再編において合併比率等を調整するときに利用されることもあります。

 株式分割は、一見シンプルな手続きに見えますが、「基準日」の取り扱い、さらには判例が示す留意点など、専門的な検討を要するポイントが多々あります。

 司法書士の視点から、株式分割における法務と実務上の論点を深く掘り下げて解説します。

株式分割は、どの機関で、どのような内容を決議するのか?

決議機関

 原則として、以下の機関で決議します(会社法第183条第2項)。

取締役会設置会社取締役会決議
取締役会非設置会社株主総会の普通決議

発行可能株式総数の変更に関する特例 

例えば、発行可能株式総数1000株、発行済株式数500株という取締役会設置会社において、1株を10株に株式分割をする場合、株式分割を行うと、発行済株式4500株増加するので、このままでは、発行済株式数5000株となり、発行可能株式総数を超えてしまいます。

 この場合は、発行可能株式総数を変更しておけばよいのですが、この「発行可能株式総数」の変更は、定款変更に該当するため、株主総会の特別決議が必要です。しかし、株式分割に伴う場合の変更には特例が認められています。

 株式分割の比率に応じて、その範囲内で発行可能株式総数を増加させる定款変更については、取締役会の決議のみで行うことができます(会社法第184条第2項)。

 これにも例外があり、複数の種類株式を現に発行している種類株式発行会社においては、この特例は適用できません。原則のとおり、株主総会の特別決議が必要となります(会社法第184条第2項括弧書)。なお、会社法上、「現に」とありますので、例えば、2種類の種類株式を定めていても、現に1種類しか発行していない場合は、特例の適用は可能です。

種類株式発行会社における留意点

 種類株式を発行している場合、特定の種類の株式のみを分割することも可能です。
 この際、他の種類の株主に損害を及ぼす恐れがあるときは、当該種類の株主による「種類株主総会」の特別決議が必要となります(会社法第322条第1項、会社法322条第4項)。ただし、定款で種類株主総会の決議を不要とする旨の定めがある場合は不要となります(会社法第322条第2項、第3項)。

 なお、上記の発行可能株式総数の変更に関する特例は、発行可能種類株式総数には適用はありません(相澤哲他編著(2006年)『論点解説 新・会社法』商事法務 191頁)。その点も注意が必要です。

 その他にも、種類株式発行会社においては論点が多いので、種類株式発行会社において株式分割を検討している場合は、専門家にご相談されることをお勧めします。

決議事項

 株式分割をする時は、下記の事項を決議します。(会社法第183条2項)

①株式の分割により増加する株式の総数の、株式の分割前の発行済株式(種類株式発行会社にあっては、分割する株式の種類の発行済株式)の総数に対する割合
②株式分割に係る基準日
③株式分割の効力発生日
④種類株式発行会社の場合は分割する株式の種類

自己株式がある場合はどうなるのか?

 株式分割の際、会社が保有する「自己株式」も分割の対象となります(相澤哲他編著(2006年)『論点解説 新・会社法』商事法務 192頁)。この点は、自己株式には割り当てられない「株式無償割当て(会社法第185条以下)」との相違点です。(他にも、株式分割と株式無償割当てには相違点がいくつかありますが、今回は割愛します。)

株式分割の基準日についての実務上の論点と判例

 株式分割をするときは、上記のとおり、当該株式分割に係る基準日を定める必要があります(会社法第183条2項第1号)。

 基準日を定める場合、原則としてその2週間前までに、基準日及び一定の事項を公告しなければなりません(会社法第124条第3項)。官報公告を利用する場合、掲載までに一定の日数を要するため、スケジュール管理が重要になります。

定款に基準日を定めて基準日公告の省略することが可能

 ここで、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、公告する必要はないとされております(会社法第124条第3項但書)。しかし、株式分割を行う以前から、定款に株式分割に係る基準日が定められている会社は、まずありません。そうすると原則どおり、基準日公告を行う必要があるということになりますが、掲載までに一定の日数を要すること、また、当然、掲載費もかかるため、株式分割についての基準日公告を行うという会社は、ほとんどありません。

 そこで、実務上は、株式分割をする際に、株主総会の特別決議によって定款を変更し株式分割の基準日を定めるという手法が用いられます。 

 具体的には、中小企業の機関設計で多い、非公開会社で、かつ、取締役会非設置会社の場合は、株主が少数であったり、株主全員の協力が得られやすいため、株主総会決議の省略(会社法第319条第1項)を利用し、基準日を設ける定款変更、株式分割の決議を行い、かつ、基準日と株式分割の効力発生日を同日とし、1日で株主分割を行うケースはあります(取締役会設置会社の事例として、相澤哲他編著(2006年)『論点解説 新・会社法』商事法務 187頁参照)。

定款に基準日を定めることについての留意点 ~東京高裁平成27年3月12日判決~

 さて、ここで、東京高裁平成27年3月12日判決をご紹介します。この判決において、定款変更による基準日の定めは、基準日の2週間前までに存在することが必要であるとされました。この判決の考え方によりますと、上記の非公開会社でかつ取締役会非設置会社の場合における、基準日と株式分割の効力発生日を同日とし、1日で株式分割を実行することは、疑義があるように思えます。

 しかし、この判決の対象会社は公開会社であります。そのため、すべての会社について同様の取扱いをすべきかは、明確になっておりませんが、個々の事案に応じ慎重に対応すべきであると考えます。(なお、この点についての1つの考え方として、弁護士の先生が書かれた論考『旬刊 商事法務 2024年9月5日号(No.2368) 実務問答会社法 第88回 『株式の分割と基準日』 』が参考になります。)

株式分割の登記

 株式分割を行うと株式数が変わるため、登記申請が必要です。株式分割の効力発生日から2週間以内に行う必要があります。

 ・一般的な添付書類⇒  ①取締役会議事録(または株主総会議事録)、②株主総会議事録を添付する場合は株主リスト、③委任状 

  ※一般的な添付書類を記載しておりますので、種類株式発行会社の場合等は他に書類が必要となりますので、ご留意ください。

 ・登録免許税⇒  3万円

  ※発行可能株式総数の変更登記を同時に行う場合でも、登録免許税の区分が、同一の区分であるため、同一申請書で申請すれば3万円で足ります。

忘れがちな株主名簿や株券の取り扱い

 株式分割をした場合、株主の株式数が変わりますので、当然の株主名簿の更新も必要となります(会社法第132条第3項)。また、株券発行会社の場合は、分割した株式に係る新株を発行しなければなりません(会社法第215条第3項)。(なお、株券の不所持の申出など、株券発行義務の例外はあります。)忘れがちなので、注意が必要です。

株式分割手続きのサポートを承っております。

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著者:代表司法書士 佐々木 翔


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