株式会社設立時の定款についての留意点 ~商号・本店編~

株式会社の設立手続きのおおまかな流れは?

 株式会社の設立を検討している方の中には、株式会社の設立することが初めてという方も多いかと存じます。株式会社の設立手続きは、おおまかには次の流れになります。

①定款の作成

②公証人による定款認証

③出資

④法務局に設立登記申請

 上記のとおり定款の作成からスタートとなります。

 定款とは会社の根本規則であり、定款の記載内容によっては後々トラブルになることもあります。

 また、定款は公証人や法務局に問題ないかチェックされるため、作成した後に公証人や法務局から修正を指示されると設立希望日に設立できないといったことにもなりかねないため、司法書士等の専門家が間に入って作成されることをお勧め致します。今回は、商号と本店について詳しくお話致します。

商号の留意点 ~ローマ数字は使用できません~

 商号とは会社の名称(会社名)です。商号について、留意すべき事項は以下のとおりです。

 まず、株式会社を設立する場合は必ず「株式会社」という文字を使用しなければなりません。「株式会社」の位置は前でも後ろでも差支えありません。そのため、「株式会社●●」又は「●●株式会社」となります。

 使用できる文字も細かいルールがあり、概要としては、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字、小文字でも可)、アラビヤ数字(1,2,3・・・)は使用可能ですが、アンパサンド(&) 、アポストロフィー(‘)、 コンマ(,)、 ハイフン(-)、 ピリオド(.)、 中点(・)については、字句を区切るためにだけ使用できます。

 上記にない「株式会社●●(●●)」のような「()」(カッコ)や「株式会社●●Ⅲ」というようなローマ数字は使用できませんのでご注意ください。

 また、「同一商号・同一本店の禁止」と言いまして、商号と本店が同一の株式会社は設立できません。また、商号と本店が同一でなかったとしても、不正の目的をもって他の会社と誤認されるおそれのある商号を使用すると訴えを提起される可能性がありますのでこの点についても注意が必要です。

本店の所在地の留意点 ~バーチャルオフィスを本店とした場合のデメリットは?~

 定款に記載すべき本店の所在地は、最小行政区画である市町村(東京都の特別区を含み、政令指定都市にあっては市)まで記載されていれば大丈夫です。具体的には、23区内の東京都世田谷区を本店とする株式会社を設立する場合は「東京都世田谷区」まで記載されていれば問題ありません。なお、「●丁目●番●号」まで記載することも可能ですが、本店を移転する際に必ず定款変更の株主総会決議が必要となり、手続きが迂遠になるため、通常は「●丁目●番●号」までは記載はしません。なお、定款には、「●丁目●番●号」までは記載する必要はないとされておりますが、登記申請までには決定しなければなりません。

 定款作成時に本店について「バーチャルオフィスを本店としたいが何かデメリットはないか?」というご相談をうけることがあります。

 バーチャルオフィスを本店として登記することは可能ですが、会社の設立登記完了後、会社の名義の銀行口座を作成しに銀行に行ったら、口座の開設を断られる、バーチャルオフィスでは、許認可の取得の条件を満たさないので、会社で行おうとしていた事業に必要な許認可が取得できない、といった事態になる可能性があります。お客様自身で定款作成から設立登記まで行った事例で本店をバーチャルオフィスにしたため、許認可が取得できない事態になり、当職に相談に来られた方も少なくありません。

設立時から将来を見据えての定款作成が大事

 今回は、定款の商号と本店についてお話しました。定款は設立後に変更することも可能ですが、後で変更する場合は、株主総会決議が必要となり、また、司法書士等の専門家に依頼すれば費用も発生します。初めから今後の会社の将来を見据えての定款の作成が必要不可欠といえるでしょう。商号と本店について今回記載しきれなかった細かいルールもありますので、株式会社の設立についてのご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

著者:代表司法書士 佐々木 翔


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