株式会社のみなし解散と会社継続の登記

株式会社のみなし解散とは?

 登記が最後にあった日から12年を経過した株式会社を休眠会社といいます。休眠会社に対し、会社法に定める手続きを経て、それでもなお休眠会社がその対応をしない場合は当該株式会社は解散したものとみなされます(会社法第472条第1項)。これが株式会社のみなし解散制度です。

 これは、①事業を廃止し実体を失った会社が登記上いつまでも存在することによって登記の信頼性を失わしめ、会社の商号選択の自由を阻害する(現行法においても同一商号・同一住所の登記は禁止されております(商業登記法第27条))、②休眠会社の登記記録が悪用され、社会犯罪の温床となる、③登記事務の能率化、合理化が阻害される、というような弊害が生じることから上記を防止するためにある制度です(落合誠一編(2009年)『会社法コンメンタール12』商事法務 157頁参照)。

 なお、特例有限会社は、株式会社ではありますが、みなし解散の制度はありません(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第32条)。

株式会社がみなし解散されるとどうなるのか? ~印鑑証明書が取得できなくなります~

 みなし解散がされると登記官の職権により解散の旨が登記され、取締役及び代表取締役に関する登記等に下線が引かれます。

 そのため、登記事項証明書を取得すると解散の旨が登記され、かつ、代表取締役の登記等に下線が引かれているので、その時に初めて解散していることに気がつき、専門家へ相談される方が多いように思います。また、この解散の登記がされた後は、清算人就任等の登記を申請しない限り、代表者事項証明書、印鑑証明書及び電子証明書の発行ができなくなります(平成27年9月7日法務省民商第104号民事局長通達)。

みなし解散がされた株式会社を復活させるには? ~会社継続の登記~

 みなし解散された後、3年以内に限り、株主総会の決議によって株式会社を継続することができます(会社法第473条)。なお、会社継続の決議の他、必要となる決議も行う必要があります。

 登記に関しては、上記の決議に基づき、法定清算人及び法定代表清算人の就任、会社継続の登記、取締役及び代表取締役の就任登記が必要になります。その他、必要に応じて、取締役会設置会社の登記等も行います。

 また、例えば、みなし解散までの間に、登記上の取締役が既に死亡しているなど、取締役に変更がある場合は、法定清算人の登記の前提として、当該取締役の変更登記が必要になります(昭和49年11月15日5938号民四課長依命通知)。

 見落とされていることが多いのですが、みなし解散までの間に、代表取締役の住所に変更がある場合は、法定清算人の登記の前提として、当該代表取締役の住所変更の登記が必要になるとされております(登記研究823号85頁)。同じく、一定の要件に該当する場合は、『監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め』の登記も必要となります(同じく、登記研究823号85頁)ので注意が必要です。

みなし解散された株式会社をそのまま放置し続けるとどうなるのか?

 解散の登記をした日から10年を経過したときは、登記官は、一定の手続きをしたうえで、登記記録を閉鎖することができる(商業登記規則第81条第1項第1号、同第2号)とされており、みなし解散された株式会社をそのまま放置し続けると登記記録が閉鎖されてしまうこともあります。

 なお、登記官が上記の根拠に基づき、登記記録を閉鎖しても、『清算結了した』ということではありません。したがって、株式会社の法人格は存続していることになりますので、清算結了に向けて、清算手続きを行う必要があります。(登記記録を復活させ、所定の手続きが必要になります。)

当事務所では、株式会社のみなし解散のご相談を承っております。

 みなし解散後、3年以内であれば、株式会社の継続も可能ですが、そのまま清算結了するという選択も可能です。弊所では、丁寧なヒアリングを行い、ご希望にあせて対応致します。

 また、今後もみなし解散にならないように、役員の任期の管理もサポートしており、定期的にご連絡する体制を整えております。当事務所から役員の任期満了等で登記が必要な時期になった場合にお知らせをすることにより、みなし解散はもちろん、役員の選任懈怠・登記懈怠を防止致します。

 みなし解散に関するご相談や任期の管理のサポートにつきましては、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

著者:代表司法書士 佐々木 翔


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