会社の本店の登記
まず、会社の定款には本店所在地として、最小行政区画まで記載しますが、登記は本店所在場所(具体的な住所)の記載が必要です。具体的には、定款において『第〇条 当会社は、本店を東京都〇区に置く。』としますが、登記は『東京都〇区〇町〇丁目〇番〇号』とします。
このように『東京都〇区〇町〇丁目〇番〇号』と登記すれば足り、ビル名やマンション名、入居している階数や部屋番号まで登記する必要はありません。しかし、『東京都〇区〇町〇丁目〇番〇号』と登記した場合に郵便物が会社の本店に到着しない場合もあり、この不都合をさけるためビル名やマンション名、入居している階数や部屋番号まで登記している会社が多いです。
また、『東京都〇区〇町〇丁目〇番〇号』と正式な形で登記をするのが一般的であり、例えば、「1丁目1番1号」部分を『1-1-1』と『ハイフン』で省略するのは望ましくありません。しかし、実際に『ハイフン』で本店を登記している会社も少なからずあるのが実情です。
会社の登記した本店のビル名やマンション名に変更があった場合
ここで、例えば、ビルのオーナーチェンジ等の理由から、会社の登記した本店のビル名に変更があった場合はどのような登記手続きが必要なのでしょうか。会社の登記した本店のビル名のみ変更され、実際に本店の所在場所に変更がない(会社は引っ越しなどしていない)場合でも『本店移転』の登記になるのでしょうか。
【会社の登記した本店のビル名やマンション名に変更があった場合具体例 ビル名が『青空ビル』から『夜空ビル』へ変更になった】
| 変更前の本店の登記 | 変更後の本店の登記 |
| 東京都〇区〇町〇丁目〇番〇号青空ビル3階 | 東京都〇区〇町〇丁目〇番〇号夜空ビル3階 |
会社の登記した本店のビル名やマンション名に変更があった場合の具体的な登記手続き
まず、法令や通達において、会社の登記した本店のビル名やマンション名に変更があった場合の具体的な登記手続について、明確な取り扱いはありません。しかし、管轄の法務局に対し、本店の『移転』登記ではなく、本店の『変更』登記を申請し、その際に提出する書類としては、変更の年月日及びの変更の理由を記載した司法書士への委任状のみとされております(当職も実際に登記した経験あります)。
これは、会社の意思によるものばかりではない土地の所有者による土地の分筆・合筆等により土地の地番が変更したことによる本店の変更登記についてその変更を証する書面の添付は必要でないとする通達(昭和40年4月27日民事甲939号民事局長回答 筧康生他編集代表(2022年)『詳解商業登記【全訂第3版】〔上巻〕』きんざい 729頁以下)があるため、会社の意思によらない本店のビル名やマンション名の変更についても同じ取り扱いなのではないかと思慮致します。
委任状に記載する変更の理由として、法務局に会社の都合(会社の意思)で変更したものではないことが明確になるように記載しなければなりません。
なお、上記のとおり、法令や通達において、会社の登記した本店のビル名やマンション名に変更があった場合の具体的な登記手続について、明確な取り扱いはないため、上記の委任状のみでは足りないとする法務局もありますので、当事務所では、事前に法務局へ確認したうえで手続きを進めております。
会社の登記した本店のビル名やマンション名を削除したい場合の登記手続き
次に、実際に本店の所在場所に変更がない(会社は引っ越しなどしていない)が、会社の登記した本店のビル名やマンション名を削除したい場合というご相談もあります。
この場合は、会社の意思により、会社の表記を変更することになりますので、取締役会設置会社であれば取締役会決議が必要とされております(神﨑満治郎他編著(2023年)『商業・法人登記500問』テイハン 371頁)。取締役会を設置していない会社に関しては上記の文献に記載はありませんが、業務執行行為として、取締役の過半数の一致が必要になろうかと思慮します。
それぞれの書類を添付し会社の本店の変更登記を申請することになりますが、法令や通達において、明確な取り扱いはないので、実際に実行する場合は、最終的には、法務局に確認が必要となります。
『1-1-1』などの『ハイフン』で本店が登記されている場合に『1丁目1番1号』と変更する登記手続き
最後に、実際に本店の所在場所に変更がない(会社は引っ越しなどしていない)が、会社の本店の登記が『1-1-1』等ハイフンで登記されている場合に『1丁目1番1号』にしたいというご相談もあります。
この場合も法令や通達において、具体的な登記手続について、明確な取り扱いはありませんが、当職の経験上、会社の登記した本店のビル名やマンション名を削除したい場合の登記手続きと同じく、会社の意思により、会社の表記を変更することになりますので、取締役会設置会社であれば取締役会決議、取締役会を設置していない会社の場合は、取締役の過半数の一致が必要になろうかと思慮します。
しかし、「1-1-1」等ハイフンで登記されている場合に「1丁目1番1号」にすることは更正登記になるのではないかという法務局もありますので、こちらも最終的には法務局に確認のうえ手続きを進める必要があります。
更正登記にあたる場合は上記とは異なる手続きが必要になります
上記の内容は、現在登記されている内容に誤りはなく、事後的に会社の意思によらない場合とよる場合の変更の手続きについてです。
以下の場合は誤りを修正する更正登記が必要になりますので、ご留意ください。
・書類に誤記してしまったため、会社の登記した本店のビル名等を正しい内容に修正したい。
・ビル名等を入れるつもりはなかったが、誤記したまま登記してしまったので修正したい。
・本店を『1丁目1番1号』と記載すべきところ、誤って『1-1-1』と書類に誤記してしまい『1-1-1』という登記になったので修正したい。
※更正登記の場合でも当事務所で対応可能ですので下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
明確な取り扱いがない登記手続きに関するご相談も承っております。
法令や通達において、明確な取り扱いがない登記手続きも現実には発生します。当事務所は法令や通達において、明確な取り扱いがない登記手続きも積極的に受任しております。実際にご依頼頂いた場合は、法務局へ事前に照会し、必要な書類を確定させ、スムーズに手続きが進むようにサポートしております。ご相談は下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
著者:代表司法書士 佐々木 翔
東京都世田谷区南烏山4丁目3番8号マノアール世田谷301
司法書士あおぞら法務事務所

