代表取締役等の住所の非表示措置の概要
代表取締役等住所非表示措置(以下、「非表示措置」といいます。)とは、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下、「代表取締役等」といいます。)の住所は、登記事項であるところ、プライバシーを保護する観点から一定の要件を満たす場合に、その住所の一部を登記事項証明書、登記事項要約書、登記情報提供サービスに表示しないこととする措置のことです。
非表示措置の申出ができるのは、株式会社のみです。したがって、特例有限会社、持分会社、一般社団法人、一般財団法人、その他各種法人等は、非表示措置の申出をすることができません。
非表示措置がされた代表取締役等の住所は、完全に非表示にはならず、最小行政区画まで(東京都の23区内の場合は「区」まで、指定都市においては「区」まで)表示され、それ以降の住所は非表示になります。つまり、具体的には、代表取締役等の住所が「東京都世田谷区××●丁目●番●号」の場合、非表示措置がされた場合は「東京都世田谷区」までは表示され「××●丁目●番●号」は表示されないということです。
非表示措置の申出は、いつでもできるわけではなく、設立の登記や代表取締役等の就任又は重任の登記、管轄外本店移転の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限りすることができます。
なお、非表示措置の申出をした場合であっても、過去に登記された住所は、非表示にはなりません。したがって、代表取締役の重任登記と同時に非表示措置の申出をした場合、既に登記されている代表取締役の住所は非表示にはならないということになります。
非表示措置のデメリットは?
非表示措置がされた場合は登記事項証明書にて代表取締役等の住所を確認することができないことになります。
したがって、通常、代表取締役等の本人確認は、登記事項証明書に記載されている代表取締役等の住所氏名と当該代表取締役等の所持する運転免許証等に記載されている住所氏名が一致し、かつ、運転免許証等の顔写真と本人の顔を確認し判断されますが、この確認ができないことになります。法務省のホームページにも注意として、以下のことが記載されておりますので、非表示措置を検討されているお客様は、ご留意ください。
「代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます。」(法務省ホームページ「代表取締役等住所非表示措置について 制度の概要 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html)
本人等の申出により、一時的に非表示措置を中断することはできない
非表示措置をご検討のお客様には上記のデメリットをご説明しておりますが、その際に「一時的に非表示措置を中断し、住所の記載された登記事項証明書を取得した後、また住所を非表示にできないのか?」とご質問を頂きます。
結論から申し上げますと、本人や司法書士等の資格者代理人であっても、一時的に非表示措置を中断することはできません。
非表示措置の申出をした後に、代表取締役等の住所が記載された登記事項証明書が必要な場合は、非表示措置を希望しない旨の申出をするしかありません。
非表示措置を希望しない旨の申出は、登記申請と同時である必要なく、非表示措置を希望しない旨の申出を単独で行うことができます。
非表示措置をご検討の場合は当事務所までご相談ください。
非表示措置は、デメリットをよく検討したうえで、実施するしないの判断が必要です。
非表示措置の申出のための必要書類については、今回は割愛しましたが、細かいルールがあります。
株式会社の設立の登記や代表取締役等の重任の登記の際に非表示措置を検討されているお客様は当事務所までご相談ください。
著者:代表司法書士 佐々木 翔
東京都世田谷区南烏山4丁目3番8号マノアール世田谷301
司法書士あおぞら法務事務所
TEL:03-6820-3546
